昨今、生成AIがいろんなところで取り入れられております。
みなさんも既に使っていることと思いますが……
測量士を主人公に、AIに短編小説を書いてもらう 、ということを思いつきまして。
“40代バツイチ測量士が山の現場から滑り落ちたらそこは竜宮城だった。
という1500字程度の短編小説を書いて”
というプロンプトを与えてみたところ、これが秀逸だったので、ここで公開しようと思いまして(( ´∀`))
(若干、突っ込みどころもありますが、それはご愛敬ということで)
なんで思いついたかって言いますと、今年度の現場で、
“これ滑り落ちたくねぇな~(ノД`)・゜・。”と思うところを担当しまして……
そこが、昔の墓地だったエリアだということもあり、若干、雰囲気がですね、何かありそうな感じだったので、そこから物語の着想を得ました。
それでは早速、どうぞ↓
【測量士・浦島太郎物語 〜山の現場で谷に滑り落ちたら竜宮城だった〜】
──測量士が竜宮城に行ったら、時間の誤差は測れませんでした──
四十歳、バツイチ。現場歴十八年。
それが、測量士・浦島太郎の現在地だった。
それが、測量士・浦島太郎の現在地だった。
梅雨明け直後の山は、ぬめるように湿っていた。公共工事の事前測量。三脚を据え、トータルステーションを覗き込みながら、太郎はひとり愚痴をこぼす。
「人生も、こんな斜面だったらな」
角度も距離も、数値で出せる。どこで間違えたか、座標で示せる。だが現実は、誤差だらけだ。
そのとき、足元の土が崩れた。
「うわっ──!」
視界が反転し、身体は谷へと滑り落ちる。木の枝を掴もうとしても空を切る。やがて、水音とともに衝撃が全身を打った。
冷たいはずの水は、なぜか温かかった。
目を開けると、そこは青く透き通る水中だった。だが苦しくない。泡の向こうから、色鮮やかな魚たちが群れをなして泳いでくる。
「ようこそ、浦島太郎様」
鈴のような声。振り向くと、長い黒髪の美女が立っていた。作業着の泥は消え、代わりに絹の衣をまとっている。
「ここは、竜宮城」
美女は微笑み、太郎の手を取った。
そこは豪奢な宮殿だった。床は貝殻のように光り、天井には揺らめく水の紋様。疲れも、痛みも、不安も消えていく。酒は甘く、料理は海の香りをまとい、笑い声が絶えない。
女は太郎を、広間の奥にある回廊へと連れていった。水の膜のような壁の向こうで、光る魚群が星座のように巡っている。
「ここでは、重さがありません」
女はそう言って、太郎のヘルメットの跡が残る額に、そっと指先を触れた。
その瞬間、胸の奥に沈んでいた疲労が溶けていく。毎朝の通勤渋滞も、現場での叱責も、養育費の振込通知も、すべてが遠ざかる。
「あなたは、ずっと何かを背負っていました」
図星だった。
太郎は笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
太郎は笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
「測量士ですからね。重い機材を担ぐのは慣れてます」
「いいえ」
女は首を振る。
「機材ではなく、後悔を」
その言葉に、太郎の喉が詰まる。
女は彼の手を取り、掌をひらいた。荒れた皮膚。節くれだった指。
「この手は、たくさんの距離を測ってきた手です。でも──」
彼女は、そっと自分の胸にその手を当てた。
「自分と誰かとの距離は、測れなかったのですね」
鼓動が伝わる。
温かく、ゆっくりとしたリズム。
温かく、ゆっくりとしたリズム。
太郎の目尻が熱を帯びる。
「……ここにいれば、測らなくていいのか」
「はい」
女は微笑んだ。
「ここでは、失敗も誤差もありません。あなたは、ただ在るだけでいい」
その夜、太郎は初めて深く眠った。
夢も見なかった。
責める声も、催促の通知音もない、空白の眠りだった。
夢も見なかった。
責める声も、催促の通知音もない、空白の眠りだった。
翌朝、目覚めると、女はすでに彼の隣に座っていた。
「おはようございます、太郎様」
その呼び方が、胸の奥をくすぐる。
誰かに「様」と呼ばれることなど、現実では一度もなかった。
彼は、知らぬ間に思っていた。
──帰らなくてもいいのではないか。
日々の離婚調停も、養育費の振込日も、誰にも必要とされない夜も、遠い泡のように消えた。
どれほど過ごしたのか分からない。数日か、数か月か。
だがある日、太郎はふと胸の奥に引っかかるものを感じた。
「現場……」
あの山。途中で終わった測量。上司の怒鳴り声。未提出のデータ。
「帰らなくては」
女は一瞬だけ寂しげな顔をし、小さな箱を差し出した。
「決して、開けてはなりません」
太郎は頷き、水面へと押し上げられた。
次の瞬間、彼は谷底に横たわっていた。濡れた作業着。砕けた機材。上空には、見慣れた空。
助かったのだ。
だが、山道に見覚えがなかった。舗装され、見知らぬ標識が立っている。スマートフォンの電源を入れると、表示された日付に息が止まった。
二〇四六年。
二十年、経っていた。
会社はとっくに倒産し、実家は売却され、元妻は再婚。娘は海外に移住し、連絡先も分からない。戸籍上、彼は「失踪者」だった。
アパートも、貯金も、人間関係も、何もかも消えている。
夜の公園で、太郎はベンチに腰掛けた。膝の上には、あの箱。
「開けるな、か……」
失うものなど、もうない。
蓋を開けた瞬間、白い煙が溢れ出した。身体が熱を帯び、視界が霞む。手の甲はしわだらけになり、背が曲がる。
鏡のような水たまりに映ったのは、八十を超えた老人だった。
測量士は、正確に距離を測る。
だが、自分が失った時間の長さだけは、どうしても測れなかった。
山の風が吹く。
それは、竜宮城の潮の香りに、少しだけ似ていた。
──完──